投稿日:2020年08月26日
「最近母の物忘れがひどく心配なので一緒に住みたい。母の家を売って介護費用に充てることはできますか?」
このようなお問合せをいただくことが増えています。
超高齢化社会の進む日本では今後ますます認知症の方が増えていくと予想されており、多くのご家庭にとって現実的な問題となりつつあります。
ただし、いくら家族と言っても、所有者でない方が自由に不動産を売却できるわけではありません。
基本的に不動産売却には「名義人の意思表示」に基づいて行われるため、所有者の方が認知症になって意思能力失ってしまうと、契約が無効になってしまうケースもあります。
今回は所有者の方が認知症になってしまった場合、どうすれば売却できるかを簡潔にお伝えしたいと思います。
不動産の売却はあくまで所有者本人の「売る」という明確な意思に基づいて行う必要があります。そのため、ご家族が代理で売却したいと思っても、名義人本人でない限り手続きはできません。
また、認知症などで意思能力が失われている場合、契約は無効になるリスクがあります。
■なぜ本人の意思が必要?「意思能力」とは
不動産売買のような重要な契約は「法律行為」と呼ばれ、契約を結ぶ本人に「意思能力」があることが前提となります。
【※意思能力とは※】
意思能力とは法律用語で、自分の行為によってどのような法律的な結果が生じるか判断できる能力のことを指します。不動産売却においては、家を売却したことによって生じる不利益を判別できない状態、例えば極端に安い金額で家を売却したにも関わらず、手元にお金もなく、住む場所を失ってしまうなどのケースは意思能力がない状態といえます。
家が売れなくても、とりあえず介護の為にと親御さんには引っ越してもらい、不動産売却は後々にと考えていたとしても、空き家の管理はとても大変です。
空き家を放置すると次のような費用が発生します。
・固定資産税
・修繕費用
・火災や災害に備える保険料
・草木やごみの管理費用
また、上記の費用に加え、介護費用や空家の固定資産税や修繕費、何かあったときのための保険費用など、金銭的に大きく負荷がかかります。
少しでも金銭面で余裕ができるよう、不要な不動産は早めに売却したほうが得策です。それではどのようにしたら、不動産を売却できるでしょうか。
親御さんの認知症がすでに進行し、意思能力が不十分な場合、不動産を売却するための方法は「成年後見制度」の中の「法定後見制度」を利用するという選択肢になります。
■成年後見人制度とは
認知症などにより十分な判断ができない方の代わりに、家庭裁判所が選任した「成年後見人」が契約や財産管理を行う制度です。後見人は所有者の代わりに手続きを進め、不動産の売却を行うことが可能です。
この制度には、本人が判断ができるうちに後見人を選ぶ「任意後見制度」と、判断能力が不十分な際に裁判所が後見人を選ぶ「法定後見制度」の2種類あります。
制度の種類 | 任意後見制度 | 法定後見制度 |
---|---|---|
利用のタイミング | 本人の判断能力があるうち | 本人の判断能力が不十分になってから |
後見人を選ぶ人 | 本人が信頼できる人を選ぶ | 家庭裁判所が選任(親族、弁護士など) |
特徴 | 事前の備えとして有効。支援内容も自由に決められる。 | すでに認知症が進行している場合に利用する。 |
どちらの制度にせよ、後見人に選ばれた方は本人の利益になるように行動しなければなりません。本人の生活費や介護費のための売却は認められる可能性が高いですが、管理が面倒だからといって市場価格よりかなり低めで売りに出すなど本人の不利益となることは認められません。また、本人が住んでいた家を売却する場合は、別途、家庭裁判所の許可が必要になります。
※必要であれば本人の判断能力を医学的に確認するため医師の鑑定を受けることになります。
※申し立てから審判まで通常約2ヵ月と言われています。
・不動産売却が可能になる
認知症で意思能力を失っても、成年後見人が裁判所の許可を得て売却手続きを進められます。
・財産の適正管理が担保される
成年後見人は本人の利益を守る立場にあるため、不当に安い価格での売却は防止されます。
・介護費用や生活費に充てられる
財産の管理が適切に行われるため、売却資金を介護費用や生活費として活用でき、家族の経済的負担を軽減できます。
・トラブル防止につながる
判断能力が低下した高齢者を狙った詐欺被害を防ぐ効果も期待できます。
上記のようなメリットがある一方で、注意しておきたいデメリットもあります。
・原則として途中でやめられない
一度開始すると、本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで制度は続きます。家族の事情でやめたいと思っても、原則終了することはできません。
・手続きに時間がかかる
申立てから後見人選任までに通常2か月程度かかるため、すぐに売却したい場合には間に合わない可能性があります。
・費用がかかる
後見人に専門家(弁護士・司法書士など)が選ばれると、継続的に報酬を支払う必要があります。
・家族が後見人になれない場合がある
家庭裁判所の判断により、弁護士や司法書士などの第三者が後見人に選任されるケースも多く、その場合、家族が望むような財産管理ができない可能性もあります。
法定後見制度 | 家族信託 | |
---|---|---|
開始タイミング | 判断能力が低下した後 | 判断能力があるうち |
財産管理人 | 裁判所が選任 | 家族間で指定 |
自由度 | 裁判所の許可が必要で厳格 | 契約範囲内で柔軟に対応可 |
目的 | 本人の財産保護が最優先 | 家族の希望に沿った財産管理 |
基本的に不動産の所有者である本人が売買の取引を行いますが、代理人や成年後見人の制度を用いて契約を進めることは可能です。
しかし、前もった準備により、いざという時にスムーズに話を進められるので、まだ先の話だと思わずに今後どのように暮らしていきたいか一度親御さんとお話されてみてはいかがでしょうか。
ただし、お客様のご状況によって取引の仕方が異なるため、一度不動産会社に相談しましょう。
ご不明な点がございましたら、不動産のプロがお手伝い致します。
お気軽にご相談くださいませ。
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