
投稿日:2026年08月30日
最終更新日:2026年08月30日
親や配偶者が亡くなり、土地や家といった不動産を相続したものの、「名義変更の手続きがよくわからない」「費用はどのくらいかかるのだろう」と不安に感じていませんか。
これまで任意だった相続による不動産の名義変更(相続登記)は、2024年4月から義務化されました。これからは、正当な理由なく手続きを怠ると、罰則が科される可能性があります。
この記事では、相続登記の基本から、必要書類・費用・具体的な手続きの流れまで、初めて手続きをする方にも分かりやすく解説します。
相続登記は、不動産を相続したすべての人に関わる重要な手続きです。まずは、制度の基本と、2024年4月から始まった義務化のポイントを正確に理解しましょう。
相続登記とは、土地や建物などの不動産の所有者が亡くなった際に、その名義を故人(被相続人)から遺産を相続した人(相続人)へ変更するために、法務局で行う手続きのことです。
不動産の所有者情報は、法務局が管理する「登記簿」に記録されています。相続登記を申請することで、この登記簿が書き換えられ、不動産が誰のものであるかが公的に証明されることになります。
これまで相続登記に法的な義務や期限はありませんでした。しかし、所有者不明の土地が増加し、社会問題となったことから、2024年4月1日から相続登記が法律で義務化されました。
申請期限は、「相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」と定められています。正当な理由がないにもかかわらず、この期限内に相続登記の申請を行わなかった場合、10万円以下の過料(行政上の罰則)が科される可能性がありますので注意が必要です。
「義務化が始まる前の相続だから関係ない」と考えている方もいるかもしれませんが、それは誤解です。今回の法改正は、2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。
過去の相続で名義変更を放置していた場合、施行日である2024年4月1日から3年以内、つまり2027年3月31日までに手続きを完了させる必要があります。実家や先祖代々の土地など、心当たりのある方は早急に状況を確認し、対応を始めましょう。
| 相続が発生した時期 | 申請期限 |
|---|---|
| 2024年4月1日以降 | 相続の開始を知った日から3年以内 |
| 2024年3月31日以前 | 2027年3月31日まで |
相続登記は、自分自身で行うことも、司法書士などの専門家に依頼することも可能です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合った方法を選びましょう。
自分で行う最大のメリットは、専門家へ支払う報酬を節約できる点です。一方、時間と手間がかかるというデメリットがあります。
・司法書士への報酬(約5万円~15万円)が不要になるため、費用を抑えられる
・戸籍謄本など多くの書類を自分で収集、作成する必要がある
・平日の日中に役所や法務局へ何度も足を運ぶ必要がある
・申請書や添付書類に不備があると、修正のためにさらに時間と手間がかかる
司法書士は登記手続きの専門家です。依頼することで、時間と手間を大幅に削減でき、ミスなく確実に手続きを完了できます。
・複雑な書類の収集・作成から申請まで、すべて任せられる
・平日に休みを取って役所へ行く必要がない
・書類の不備や申請ミスがなく、スムーズに手続きが完了する
・登録免許税などの実費とは別に、司法書士への報酬が必要になる
以下の項目に一つでも当てはまる場合は、手続きが複雑になる可能性が高いため、司法書士への依頼を検討することをおすすめします。
□ 平日に役所や法務局へ行く時間がない
□ 相続人が3人以上いる、または遠方に住んでいる人がいる
□ 他の相続人と疎遠、または面識がない
□ 亡くなった方(被相続人)が何度も転籍している
□ 何代にもわたって相続登記が放置されている(数次相続)
□ 相続財産の種類や不動産の数が多い
□ 相続した不動産をすぐに売却する予定がある
相続登記には、ご自身で行う場合でも必ず発生する「実費」と、専門家に依頼した場合にかかる「司法書士報酬」があります。
登録免許税は、登記を申請する際に国に納める税金です。税額は以下の計算式で算出されます。
登録免許税 = 不動産の固定資産評価額 × 0.4%
例:固定資産評価額が2,000万円の土地を相続した場合
登録免許税は8万円(2,000万円 × 0.4%)となります。固定資産評価額は、毎年市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書や、固定資産評価証明書で確認できます。
相続登記には、戸籍謄本や住民票など、さまざまな証明書が必要です。これらの書類を取得する際には、各市区町村役場に手数料を支払う必要があります。
| 書類の種類 | 手数料の目安(1通あたり) |
|---|---|
| 戸籍謄本 | 450円 |
| 除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 750円 |
| 住民票の写し・住民票の除票 | 300円 |
| 印鑑証明書 | 300円 |
| 固定資産評価証明書 | 300円 |
相続人の人数や、被相続人の転籍回数などによって必要な書類が変わりますが、一般的には数千円から1万円程度になることが多いです。
司法書士に相続登記を依頼する場合、上記の「実費」に加えて司法書士への報酬が発生します。報酬額は事務所や事案の難易度によって異なりますが、一般的な相場は5万円~15万円程度です。
不動産や相続人の数が多い、数次相続が発生しているなど、手続きが複雑な場合は報酬が高くなる傾向があります。依頼する際は、事前に見積もりを取り、費用の内訳をしっかり確認しましょう。
①自分でできる範囲は自分で行う
戸籍謄本の収集など、比較的簡単な作業を自分で行い、専門的な登記申請の部分だけを司法書士に依頼することで、報酬を抑えられる場合があります。
②「法定相続情報証明制度」を活用する
法務局で「法定相続情報一覧図」の写しを無料で交付してもらう制度です。これを取得すれば、その後の手続きで戸籍謄本一式の提出が不要になる場面が多く、金融機関での手続きなどを同時に進める場合に戸籍謄本を何通も取得する費用を節約できます。
③登録免許税の免税措置を確認する
一定の条件を満たす場合、登録免許税が免除される特例があります。例えば、相続した土地の評価額が100万円以下である場合などが対象です。ご自身のケースが該当するか、法務局のウェブサイトなどで確認してみましょう。
相続登記の手続きは、一般的に以下の7つのステップで進みます。全体像を把握しておくことで、スムーズに対応できるでしょう。
ステップ1:遺言書の有無を確認し、相続人を確定する
ステップ2:対象の不動産を正確に把握する
ステップ3:遺産の分け方を決める(遺産分割協議)
ステップ4:必要書類を収集する
ステップ5:登記申請書を作成する
ステップ6:管轄の法務局へ申請する
ステップ7:登記完了書類を受け取る
まず、故人が遺言書を遺していないかを確認します。遺言書があれば、原則としてその内容に従って手続きを進めます。
遺言書がない場合は、誰が法的な相続人になるのかを確定させる必要があります。そのために、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)を取得します。これにより、すべての法定相続人を正確に把握できます。
次に、名義変更の対象となる不動産を特定します。固定資産税の納税通知書だけでは、私道など非課税の不動産が記載されていない場合があるため、市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得して、故人が所有していた不動産の一覧を確認しましょう。
さらに、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、不動産の所在地や地番、所有者の名義などを正確に確認します。
相続人が複数いる場合は、誰がどの財産を相続するのかを全員で話し合います。これを「遺産分割協議」と呼びます。
協議がまとまったら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し、実印を押印します。この書類は、相続登記を申請する際の重要な添付書類となります。
ステップ1~3と並行して、登記申請に必要な書類を収集します。必要な書類は相続のパターンによって異なるため、後述の「必要書類一覧」で詳しく確認してください。
必要書類がすべて揃ったら、登記申請書を作成します。申請書の様式や記載例は、法務局のホームページからダウンロードできます。登記事項証明書や固定資産評価証明書を見ながら、不動産の情報や相続人の情報、課税価格、登録免許税などを正確に記入します。
作成した登記申請書と収集した必要書類一式を、不動産の所在地を管轄する法務局へ提出します。申請方法は、窓口へ持参するほか、郵送でも可能です。司法書士に依頼した場合は、オンライン申請を利用することが一般的です。
申請後、法務局での審査に通常1~2週間程度かかります。審査が完了すると、登記が完了したことを証明する「登記完了証」と、新しい権利証にあたる「登記識別情報通知」が交付されます。登記識別情報は、将来その不動産を売却したり担保に入れたりする際に必要となる非常に重要な書類ですので、大切に保管してください。
相続登記に必要な書類は、「遺言書の有無」や「遺産分割協議の有無」など、相続の状況によって異なります。ここでは代表的な3つのケースに分けて、必要な書類を一覧でご紹介します。
以下の書類は、どのパターンであっても基本的に必要となります。
| 書類名 | 取得場所 |
|---|---|
| 登記申請書 | 法務局のサイトで作成・ダウンロード |
| 被相続人(故人)の住民票の除票または戸籍の附票 | 最後の住所地の市区町村役場 |
| 不動産を相続する人の住民票 | 相続人の住所地の市区町村役場 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所) |
遺言書に基づいて登記を行う場合、遺産分割協議書は不要です。公正証書遺言か、法務局で保管されていた自筆証書遺言であれば、家庭裁判所での「検認」手続きも必要ありません。
【必要な書類】
・遺言書
・被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
・(遺言執行者がいる場合)遺言執行者の印鑑証明書
遺言書がなく、相続人同士の話し合いで不動産を取得する人を決めた場合は、以下の書類が必要です。
【必要な書類】
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本一式
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議を行わず、法律で定められた相続分(法定相続分)のとおりに共有名義で登記する場合は、遺産分割協議書と印鑑証明書が不要です。
【必要な書類】
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本一式
・相続人全員の戸籍謄本
ただし、不動産を共有名義にすると、将来売却する際に共有者全員の同意が必要になるなど、手続きが複雑化するデメリットがあるため、慎重に検討することをおすすめします。
相続登記の義務化に伴い、手続きを放置することのデメリットは以前よりも格段に大きくなりました。主な3つのリスクを理解しておきましょう。
最大の変更点は、罰則が設けられたことです。前述のとおり、正当な理由なく期限内(相続を知った日から3年以内)に相続登記を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
不動産の名義が亡くなった方のままだと、売却や担保設定などの手続きをスムーズに進められない場合があります。いざ不動産を活用しようと思ったときに、相続登記から始める必要があり、売却のタイミングを逃してしまう可能性もあります。
名義変更をしないうちに相続人の誰かが亡くなると、その人の相続権がさらにその子供や配偶者へと引き継がれてしまいます(これを「数次相続」といいます)。
時間が経てば経つほど関係者の数はネズミ算式に増えていき、面識のない遠い親戚などとも連絡を取り、遺産分割協議を行わなければならなくなります。全員の合意を得ることは非常に困難になり、手続きが事実上不可能になってしまうケースも少なくありません。
「相続人申告登記」とは、自分が相続人の一人であることを法務局に申し出る簡易な手続きです。ただし、これは暫定的な措置であり、最終的に不動産の名義を変更するためには、別途、正式な相続登記が必要になる点に注意が必要です。
遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、原則として相続税の申告が必要です。申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」のため、早めに確認しましょう。
不動産を管轄する法務局へ郵送で申請できるほか、オンラインでの申請も可能です。また、司法書士に依頼して手続きを進めることもできます。
相続による不動産の名義変更(相続登記)は、2024年4月からすべての相続人にとっての義務となりました。期限内に手続きを終えなければ過料の対象となるだけでなく、放置することで将来的に大きなトラブルに発展するリスクもあります。
相続が発生したら、まずは手続き全体の流れを把握し、できるだけ早く着手することが大切です。ご自身で手続きを進めるのが難しいと感じる場合や、少しでも不安がある場合は、無理をせずに司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
また、相続した不動産については、登記を済ませるだけでなく、その後「売るのか」「活用するのか」「そのまま所有するのか」についても考えていく必要があります。
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